『ユートピア』


善意は、悪意より恐ろしい。

足の不自由な小学生・久美香の存在をきっかけに、母親たちがボランティア基金「クララの翼」を設立。

しかし些細な価値観のズレから連帯が軋みはじめ、やがて不穏な事件が姿を表わす―。


湊かなえが放つ、心理サスペンスの決定版。 地方の商店街に古くから続く仏具店の嫁・菜々子と、
夫の転勤がきっかけで社宅住まいをしている妻・光稀、
移住してきた陶芸家・すみれ。

美しい海辺の町で、立場の違う3人の女性たちが出会う。

「誰かのために役に立ちたい」という思いを抱え、それぞれの理想郷を探すが―。

第29回 山本周五郎賞受賞作!


景色が良くて、静かで、海の幸が美味しくて、創作意欲をかき立てられる・・・

そんな「都会の人が憧れる田舎」に移住してきた「アーティストたち」や、

東京への栄転叶わず、この島にある工場へと転勤になり、不本意ながら引っ越してきた「転勤組」、

別にこの町の魅力なんて1つもない、と思っている、生まれも育ちもここという「地元民」

・・・との間に生じるズレ、摩擦の描き方が巧みでした。


あの人は父親が医者だからお嬢様気質だとか、
慈善活動って言うけどあれは障がい者を利用しているだけだとか、

妬み、嫉みによって、事実に対する印象が簡単に歪んでいく恐ろしさったらないです。


ラスト1頁は何度も読み返して、よく噛んでから、飲み込みました。

ああ、よく出来たラスト、、!


それからタイトル。

読み始めに抱いていたイメージが、真逆のイメージへと変わっていく様は、恐ろしかったです。

なんて皮肉なタイトル。


(え?このまま綺麗にまとまってしまったら、湊かなえじゃないぞ!?)と思わされる終盤でしたが、そこは湊さん!

しっかりと、嫌〜な余韻の残るラストへと繋がっていて、大変うれしかったです。


紋佳🐻

読書