『しずかな日々』


おじいさんの家で過ごした日々。

それは、ぼくにとって唯一無二の帰る場所だ。

ぼくは時おり、あの頃のことを丁寧に思い出す。ぼくはいつだって戻ることができる。

あの、はじまりの夏に―。


おとなになってゆく少年の姿をやさしくすこやかに描きあげ、野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞した感動作。


妹から借りっぱなしだった本を、ようやく手に取りました。


『大人は、ぼくの関知しないところで勝手に行動をして、物事を都合のいいように決めてしまう。
ぼくは、それをずるいと感じていたけど、それは同時に尊敬することでもあった。
あの頃は、世の中がどういうふうに成り立っているのかまったくわからなかったし、大人というのは絶対的な存在だった。』

傷つきたくないから、痛みに慣れてしまおうとする姿。

悲しみたくないから、幸せを手放してしまおうとする姿・・・

親になったいまの私が読むには、切な過ぎる心理描写に、思わず胸がつまりました。


『「おばあさんって、いつ、いたんですか」
本当は、「おばあさんはいつ死んだんですか」って聞きたかったけど、それじゃああんまりだと思って、そう聞いてしまった。』

子どもの世界を、こんなにも繊細に、純粋に描ける作家さんがいるんですね。


講談社児童文学新人賞を受賞されているのも納得の、透き通るような瑞々しいお話でした。

癒されました。


紋佳🐻

読書