『掬えば手には』


ちょっぴりつらい今日の向こうは、光と音があふれてる。

『幸福な食卓』、本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』に連なる、究極に優しい物語。


私は、ぼくは、どうして生まれてきたんだろう。

大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。

ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。

常盤さんは辛い秘密を抱えていたのだった。


だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語。


激しく胸を打つというより、静かで穏やかな振動をじんわり感じ続けることのできる、瀬尾まいこさんらしい、やさしい作品でした。


誰かのことを罵倒し続けるバイト先の店長、
ずっと引きこもりだった友人、
挫折したことを引きずっている友人・・・

みんな完璧じゃなくて、何かしらの傷を負っている。

それでいいし、傷を隠そうとしなくてもいいんだよ。

そうあたたかく包み込んでくれるような作品でした。


いそがしくて読書量がガクンと落ち、こころが荒みがちな私に、癒しをくれた一冊。

ああ、本読みたい・・・


紋佳🐻

読書