『現地嫌いなフィールド言語学者かく語りき』


はやく日本に帰りたい。

ブルシャスキー語、ドマーキ語、コワール語、カラーシャ語、カティ語、シナー語、カシミーリー語・・・。

文字のない小さな言語を追って、パキスタン・インドの山奥へ―。

著者は国立民族学博物館に勤務するフィールド言語学者。

パキスタンとインドの山奥で、ブルシャスキー語をはじめ、話者人口の少ない七つの言語を調査している。

調査は現地で協力者を探すことに始まり、谷ごとに異なる言語を聞き取り、単語や諺を集め、物語を記録するなど、その過程は地道なものである。

現地の過酷な生活環境に心折れそうになりつつも、独り調査を積み重ねてきた著者が、独自のユーモアを交えつつ真摯に綴る、思索に満ちた研究の記録。


『いつだって調査に行く際には、出発前から早く家に帰りたいと思っている』

そんなフィールド言語学者いるのか!と突っ込むところからページをめくり始めました。


『※余談だが、僕は大学院に入るころまで、人体部位としての「甘皮」(爪の根元にへばりついている柔らかい皮)という単語を知らなかった。
だって、そんな部位に名称があるだなんて、思わなくない?』

注釈が斬新。笑

思い出を語ったり、突っ込みを入れたり自由すぎる。フリースペース。


『ダハブ・ゲームがなければ、もしかしたら僕は今ごろ、研究者にはなっていなかったかもしれない。
そう思うと、感謝の念や積年の恨みが湧き上がってきて、エジプトに片足を向けて眠れるように蒲団を敷きなおしたくなってしまう。』

なんだろう、この人の文章に対する既視感・・・

と思いながらずっと読み進めていて思い当たりました。

そう、芸人さんのエッセイだ。

最近読んだふかわりょうさん、『波』で連載中の銀シャリ・橋本さんなどなど・・・

そう、そんな方々と似た着眼点、そして恨み節!笑


言語学を嗜むひとから、全く分からないひとまで楽しませてくれる、学術書であり、笑えるエッセイでした。

いつも本を貸してくださるAお姉さまに感謝して。


紋佳🐻

読書