『ゆうべの食卓』


ひとりの、二人の、家族の、ささやかであたたかい11の食卓の記憶―

2020年6月から『オレンジページ』に掲載された「ゆうべの食卓」。

新型コロナに翻弄されながら離婚を決意する女性。
恋人にふられたのをきっかけに料理に目覚めるサラリーマン。
実家を売却することになった兄弟のささやかな宴会。

さまざまな人生のひとコマを「食卓」というキーワードで紡いだ、直木賞作家・角田光代氏の短編集。


『オレンジページ』の連載を1冊にまとめたという本なので、とても読みやすかったです。

どうしても私は、小説を読む時に、最悪の方へ、最悪の方へと、ドロドロとした展開を想像して読んでしまうのですが(そういう物語、大好物です)、そこは角田さん。

どこまでも穏やかで、平和。

心にチクリとくる瞬間もあるけれど、読了後、そのトゲは跡形もない。

例えるなら水色、そんな爽やかさの残る作品でした。


『もちろんケーキ屋さんのケーキにはかなわない。
でも市販のものとは違う、なんだかのんきなおいしさがある。』

手づくりケーキに、『のんきなおいしさ』という言葉をえらべる角田さんが、すきです。


時代も、他人も、自分も、変わっていくものだから。

恐がることはないんだよ、とやさしく包みこんでもらえる本でした。


あとね、「本のかたち」が、かわいい!

一般的な単行本のサイズよりも、縦が1cmくらい短くて。

開いたときの形がとてもかわいいんです。

読みながら、きゅんきゅんしてしまいました。


紋佳🐻

読書