『国宝 下〈花道篇〉』
鳴りやまぬ拍手と眩しいほどの光、人生の境地がここにあるー
芝居だけに生きてきた男たち。その命を賭してなお、見果てぬ夢を追い求めていく。
芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をW受賞、
『悪人』『怒り』につづくエンターテイメント超大作!

上巻では深掘りされていなかった彰子の父、千五郎が、かっこよかった。
『(略)役者が立派なふりしてどうするんですかい?いいですか。立派な人間じゃねえからこそ立派ってこともあるんだよ』
この台詞には痺れました。
そして下巻で圧巻だったのは、女性陣のつよさ。
『竹野さん、何を今さらやわ。この世界に何年おんの。うちはな、もう体の芯から役者の女房やわ。旦那が高熱やろうと、両足失おうと、・・・たとえ、気ぃふれたとしても、その背中、泣きながらでも押して舞台に立たせます。ひどい話や。ひどい女房や。せやけど、それでも役者には舞台で拍手浴びてほしいねん』
映画版よりも原作の方が、幸子、春江、彰子、綾乃―男たちを支える妻たちのつよさ、しなやかさ、覚悟が、こころにずっしりと残りました。
上巻に引き続き、テレビ業界に対する風刺も。
『今のテレビっちゅうもんはな、たとえ1時間面白いこと喋っても、放送されんのは、偶然、鼻水垂らしたとこだけや。それが一番ウケて、また次の番組に呼んでもらえんねん。もう良し悪しなんかあれへん。晒せるか晒せへんか、それだけになってしもたんや』
才能でも努力でもなく、偶然切り取られた一瞬だけが消費されていくテレビ業界。
そこに身を置く人間の虚しさがよく描かれていました。
静かに終末を迎えるラストは美しく、
「なにものも犠牲にして芝居に生きる役者」というものを【途中まで】描いた映画版に対して、
「芝居に生き、芝居に喰われた役者の顛末」を、小説版は描ききっていて、大変よい余韻でございました。
小説版、読んでよかった。
おすすめです。
紋佳🐻









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