『シェニール織とか黄肉のメロンとか』


かつての「三人娘」が織りなす幸福な食卓と友情と人生に乾杯!

作家の民子、自由人の理枝、主婦の早希。
そして彼女たちをとりまく人々の楽しく切実な日常を濃やかに描く、愛おしさに満ち満ちた物語。

江國香織〝心が躍る〟熱望の長編小説。


中学生時代「三人娘」と呼ばれ、青春を共に過ごした3人が、50代を迎えたのち再び交流を重ねていく―その暮らしぶりを描いた物語。

劇団テアトル・エコー『八月の人魚たち』を思い出す作品でした。


『薫はプールという場所を、自分がこんなに好きになるとは思っていなかった。水のなかにいると、まわりに人がいてもすんなり”ひとりきり"の心持ちになれる。水着とキャップという最低限のものしか身につけていない自分の身体は小さく軽く感じられ、その無防備さが、かえって薫を勇敢にする。ガラスが多用されているので、晴れた日には日ざしが入り、雨の日には雨粒が見える。その、外界と隔てられているのにつながっているような感じも気に入っていた。』

物語のあちらこちらにそっと織り込まれた、繊細で透き通るような表現に、思わずうっとりしてしまう。

江國さんの筆の跡だなあと感じました。


『そして、男にもらった煎餅をわまたばりんとかじった。』

力強い音や、歯や頭蓋骨にまで響く振動が伝わってくるような描写も見事。

ただ繊細なだけじゃない、その振れ幅にぐっときます。


ひとは、いくつになっても変わらないのかもしれない。

変わっていく部分はあっても、根っこのところはずっと同じで、ただ見えていないだけ。

歳を重ねるというのは、失うばかりではなくて、ほどけていくということ。

そんな自由さを、ゆったりと感じさせてくれる物語でした。


紋佳🐻

読書