『けだま』
くだらなくて、愛しい日常。
楽しいことばかりではないけど、それでも服は着る。
今回は華やかな服ではなく、まるで毛玉ができるような、ささやかな日常の服を入り口に、22篇のエピソードを書きました。
ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
浜島直子
『今この瞬間は可もなく不可もなく、ただ粛々と過ぎていく時間の連なりだとしたら、過ぎ去ったその時間にどんな意味を付け、どうやって自分の中で着地させるか。(略)
その作業を繰り返すことで、少しずつ少しずつ、バウムクーヘンのようにふくよかな人生になっていくのではないかと思うのです。』
この「はじめに」を読んだ瞬間に、恋に落ちました。
あ、すきです。
エッセイは割とよく読む方ですが、こんなにも言葉の選び方、並べ方が、どストライクな作家さん、なかなかいません。
ミステリーハンター時代に遭遇した事件の数々、そして乗り越えた先に見える景色・・・
読んでいるだけでワクワクしました。
美人で賢いだけじゃミステリーハンターにはなれない。
虫への耐性とか、言葉の通じない相手と意思疎通をはかるための根気や愛情とか、必要な要素が山ほど。
選ばれしハンター、ですね。尊敬。
モデルさんだからというだけではなく、幼少期からおしゃれが、服がだいすきな浜島さん。
『20代の頃は、まだ幼さが感じられる頬のラインや二の腕の眩しさにピンクをあてがうといかにも甘く、とってつけたように雌の弱さとずるさをちらつかせているような気がして、なかなか手が出なかった。
30代になると少しずつピンクのものが増えてはいったが、「勝気な戦士」にとってピンクは特別な戦闘服であり、華だけでなく毒を伝えるものでもあった。
40代の今はどうだ。疲れた顔とくたびれた体型。
頬のシミが、たるんだ二の腕がおのずとスタイリングを着崩してくれて、甘さは優しさに、毒は軽やかさに変化して見える。
あの頃に感じていた他人に対する媚びもなく、自分の華とオーラのなさを隠すための鎧でもなく、ささやかな日常にほんの少しのウキウキがありますようにと、決して贅沢ではない願いをそっと込め、ピンクの持つ力を素直に借りている。』
年齢ごとの変化を、ピンクを軸に表現したこの部分。
ああすき。
私もいつか歳を重ねていけば、「鎧ではないピンク」を装うことができるのかな。
『自分を大きく見せようとつま先立ちをしていたら、疲れて足がつってしまう。(略)
こずるい100点より、自分らしく頑張った50点を目指そう。』
『感謝をすると心が癒え、弱さを認めると心に筋肉が付く。』
このひたむきさ、清潔さ。
こんな大人になりたい、と思わずにいられません。
いまある自分らしさの先で、理想の自分を追い求めるためには。
そんなことに思いを馳せながら、本を閉じました。
紋佳🐻
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