『東京日記 卵一個分のお祝い』


「本書は、本当日記です。少なくとも、五分の四くらいは、ほんとうです。
ふつうに生活していても、けっこう妙なことが起こるものだなあと、読み返しながら、なつかしく思い出しました。」
(あとがきより)

本書は、川上弘美さんが、雑誌『東京人』にて連載中の『東京日記』の単行本化です(2001年6月号~2004年5月号分を収録。続編も予定)。

著者ならではの、エッセイとも小説ともつかない、おかしみとシュールさの入り混じった世界が広がる本書は、川上的世界のエッセンスがたっぷりつまった、ファンの期待にこたえる一冊です。


川上さんのエッセイって、私読んだことなかったかしら。

こんなに個性的で、不思議な人だったかしら。

一般的なエッセイといえば、共感を誘うあるあるや、羨望を集める感性や生き方を綴ったものが多いけれど、こちらはそのどちらでもなさそう。

ひと言で言えば、独特!

私は好きです。


人と待ち合わせても、目的日たどり着けない。

それも一度や二度じゃなく、駅から徒歩二分の場所でも。

人に会いすぎたから、人に会わない日を3日間作る。その間は子どもとも目を合わせない。

視界に入れない。

『劇を見にいく。面白かったが、久しぶりに人ごみに出たので、帰り、突然機嫌が悪くなる。

環境の変化に適応できない質なのだ。たまたま一緒にいた人に、当たり散らす。

当たり散らすといっても、怒鳴ったり怒ったりからんだりするのではなく、首をへんな角度に曲げ、そのまま絶対にその角度を変えないという、ひどくわかりにくい当たり散らしかたなので、一緒にいた人は心底閉口していた。』

下北沢、池袋・・・とにかく、よく観劇される方なのですね。

趣味がないと綴られていたけれど、観劇を趣味と言えばいいのに、というくらいのペースで観ていらっしゃる。


イラストがとてもゆるくて良い。

文章の合間に挟まってきたり、1ページに1つ現れる時もあれば、まったく現れない頁もあって。

川上さんの自由なエッセイを、視覚的にも自由に、にぎやかしている感じが、ぴったりの組み合わせ。


こんなにも唯一無二のエッセイ、初めて。

シリーズが7巻まで出ているということで、追いかけたいと思います。

人生に少し疲れたと思っている人に、オススメしたい本。


紋佳🐻

読書