『これが生活なのかしらん』


自費出版作品としては異例の売れ行きを記録した『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』の小原晩、書き下ろし最新作!

まぶしいほどまっすぐで、愛おしい。ままならない生活をめぐる38編のエッセイ。


住めば都。

どんなに狭くても、
他人と相部屋でも、
趣味じゃない内装だったとしても。

自分の城を手に入れたという感動が、『絶望にさえあこがれていた』のひと言に集約されていました。

『(略)
私の部屋は一番手前に置かれた二段ベッドの上段で、ここに両親が買い与えてくれたニトリのスチールラックを一つ置き、おままごとみたいにささやかな机を一つ置き、シングルサイズの布団を一枚敷いている。
二段ベッドは豹柄のカーテンで仕切られており、これによってプライバシーを保つことができる。
ちいさな電球は柱に巻き付けてあるので、それをぱちっとつけると、バーくらいの明るさは手に入る。
これが私の城である。
これが私の安心である。
散乱していても、極端に狭くても、ピンクでも、豹柄でも、私の自由は、私のものとなったのだ。
はじめての休日に、私は自分の城にこもって、十本入りのチョコチップパンを、一本一本たいせつに頬張る。
じぶんの未来についてあれこれ考えているうちに、ふにゃふにゃと眠ってしまう。
ここには明日がある。あたらしい明日が。
絶望にさえあこがれていた。
エイティーンブルース。』

痺れる。

絶望・憂鬱にさえ、希望が感じられる。

まさにブルース。


それにしても、

『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を拝読していたから、上京して初めて就職した美容室が、かなりブラックだったのは知っていたのだけれど。

読んでいるだけで、こちらまで体調不良になりそうな内容でした。


住む場所・家が変わる度に差し込まれる、部屋の間取り図のページのフリーハンドさよ。

下書きなんてしてたまるかこのやろうってくらいに、自由な線で描かれた間取り図が、東京に呑み込まれ、揉みくちゃにされている当時の小原さんを表しているようで、最高に豪快でした。


料理が上手くなくたっていい、1日中だらだら布団で過ごしたっていい、人と同じことが出来なくたっていい・・・

脱力しながら生きることを、全力で肯定してもらえるような、何もかも放り出したいくらいに疲れたときに読みたい一冊。


紋佳🐻

読書