『復讐屋成海慶介の事件簿』


恋と仕事を同時に失い深く傷ついた美菜代は、自分を裏切った元彼への復讐を心に誓い、凄腕だと噂される復讐屋・成海慶介の事務所を訪れる。

しかし、セレブからのみの依頼を受ける成海には復讐の代行を断られてしまう。

美菜代は仕方なく、秘書として成海の事務所で働きながら「復讐」の極意を学ぼうとするが・・・。

読むほどに気持ちが晴れていく、自分の人生を取り戻すための物語。


パワハラ気質で損得勘定で動く「成海事務所」所長と、元カレから受けた精神的苦痛を理由に会社を辞め、復讐屋の相棒となる敏腕秘書。

ドラマを一気見したかのような読み応えでした。


原田さんの作品といえば、おいしい料理が出てくる印象がありますが、こちらはそれらの作品とは異なります。

精神的苦痛により、食べものを受け付けなくなった身体で、元秘書の女性が唯一食べられるのが、コンビニのジャンキーなパン。

それもあまり、美味しそうに描かれていないので、原田さんの作品としては珍しいなと驚きました。


『青山のレストランで行われた女子会はかなり退屈だった。
会社の同期だけが集まる女子会。半年に一回、定期的に開かれている。
すでに結婚したり、転職したりした人にも必ず声をかけることになっていた。
しかし、アラサーともなると、お互いそう大きな変化はないので、話も行き詰まりがちだった。
その日は美菜代を入れて八人が集まっていた。
今回は、数ヶ月前に出産した市井愛美が、子供を夫と義理の母親に預けて「久しぶりの息抜き」と称してやってきていた。話は自然、彼女に集中し、愛美も機嫌よく妊娠出産から、現在の子育てまで事細かに話した。(略)
この歳まで会社に残っているとなると、そこそこのキャリアを築きつつある。中には係長やグループリーダーになった人もいる。
入社したばかりのように気楽に部署や上司の悪口も言っていられない。
仕事の踏み込んだ話は同じ会社といえども、いや同じ会社だからこそ、やすやすと口にできない。
結局、子持ちの同期の愚痴を聞いているのが一番安全なのだ。』

アラサー女子の集まりのリアル。
こういう何気ないワンシーンの描写に痺れるから、原田さん好きです。


2024年12月に文庫版『その復讐、お預かりします』として、改題され出版されたこちらの作品。

単行本の初版は2015年に出ていることを思うと、10年の時を経ての文庫本化!!

さすが、原田さんの人気ここにあり、ですね。


紋佳🐻

読書