『砂漠の悪魔』
「えっ・・・これ、本当に近藤史恵さんの著書・・・?」
近藤さんの作品は数え切れないほど拝読してきましたが、過去、こんなにもこころに重く染み込んだ物語は初めてでした。
誤解を恐れずに言えば、早瀬耕さんの『未必のマクベス』と、近い香りがします。
こちらは中国で繰り広げられる逃亡ストーリー。
一口に中国と言っても、広大な国だけあって、都会もあれば砂漠もあり、景色の移り変わりがとてもひとつの国の景色とは思えないほどでした。
また、漢民族とウイグル民族間での人種差別、宗教差別なども、とてもリアルに描かれていて、作品をとても重厚なものに仕上げています。
きっかけは本当に些細な悪意。
たった一瞬の判断によって、人生から足を踏み外した主人公が、どこまでも転げ落ちていく様は、ただただ恐怖でした。
とにかく冒頭の作り込み方がお見事!
あっという間に感情移入してしまった主人公が、次の瞬間には犯罪者に。
初めから犯罪者に自分を重ねるなんて、なかなかできないものですが、
この作品ではもれなく「読者全員」が、主人公=犯罪者に、共感してしまうんです。
本当にお見事としか言い様がありません。
近藤史恵さん・・・こんなに深く重い、それでいて繊細な・・・壮大でありながらリアルな物語を紡ぐ力をもお持ちだなんて。
今年読んだ本の中で、最も感動した本です。
はっきり言って、おすすめ。
#砂漠の悪魔
#近藤史恵
紋佳🐻
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