『丕緖の鳥:十二国記』
「絶望」から「希望」を信じた男がいた。
慶国に新王が登極した。
即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。
陶工である丕緒(ひしょ)は、国の理想を表す任の重さに苦慮する。
希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか──
表題作「丕緒の鳥」ほか、己の役割を全うすべく、走り煩悶する、名も無き男たちの清廉なる生き様を描く短編4編を収録。
慶、柳、雁の国々の、官僚、役人たちのお話で、これまでは王や麒麟、あるいは民の視点から描かれてきた物語に、さらに深みを持たせてくれる一冊でした。
解説での、辻真先さんの言葉。
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異世界ファンタジーの多くは、疾走する英雄たちの威風に焦点を合わせ、その言動を歌い上げる。決して自分にできないことを、絵空事のヒーローたちがやってのけるからだ。
ところが『十二国記』は、断固として民の視点にこだわり抜く。(略)
このシリーズが読者にもたらす興奮は、一過性のものではない。“決して自分にできないこと”ではなく、必ず“自分にだってできること”があると思い知る―
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うんうん、と深く頷きました。
ヒーロー不在なばかりに、辛くてどうしようもなかったりもするのですが、
(特に出産後は、子どもを残して親が死ぬとか、子どもが犠牲になるといった描写に私耐えにくい体質になりつつあります)
その中で力強く生きていく「民」の物語であるなあと、今回尚更に感じたのでした。
紋佳🐻
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