『旅ごはん』


リトアニアのピンクのスープ、アーティチョークのオムレツ、崎陽軒のシウマイ……。

著者が魅了されたリトアニアや、暮らしを営むドイツをはじめとする欧州各地の料理から、身近な日本のお弁当まで、忘れられない味と人々との出会いを綴った、人気作家のおいしいエッセイ。


いろんな国を食べ歩いている小川さんだけど、銀山温泉のちいさな旅館の話は特に痺れました。

地元のおとうふ屋さんで、夏なら冷や奴、冬なら生揚げを購入し、
近くの酒屋の冷蔵庫で売られている、地元の大吟醸酒『絹』300mlを片手に、客室でしっぽり晩酌タイム。

「部屋でこっそり食べる野川とうふやの生揚げと、ビール用のコップでちびちび飲む日本酒の絹は、私にとっての銀山温泉の醍醐味。これこそが、ご当地グルメだと思っている。」

箱根に旅行にいったとき、商店街で「わさび漬け」と「地ビール」を購入して、部屋でいただいた私も、近しいソウルを持っていると自負したいところです。


小川さんの小説作品も、どれもとても好きなのですが、
やっぱり小川さんの言葉がそのまま綴られた随筆が、特に好き。

『真っ白いクロスのかけられたテーブルについて待っていると、まず登場したのはパンだった。手にとるとまだ温かく、小鳥の雛を抱いているような気分になる。』

旅先で五感を通して感じたことを、こんなにもうつくしく繊細に伝えてくださる作家さんはそういません。


紋佳🐻

読書