『正欲』
あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。
息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。
しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、
ひどく不都合なものだった―。
「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、 そりゃ気持ちいいよな」
これは共感を呼ぶ傑作か?
目を背けたくなる問題作か?
作家生活10周年記念作品・黒版。
あなたの想像力の外側を行く、気迫の書下ろし長篇。
読みました、巷の話題作!
「正しい命の循環の中にいる人たち」と、そうでない人たちの世界の見え方の違い、その境界線がくっきりと描かれていて、その危うさ、深刻さが身に迫って伝わってきました。
『自殺の方法を一度も調べたことのない人の人生は、どんな季節で溢れているのだろう。』
『幸せの形は人それぞれ。多様性の時代。自分に正直に生きよう。そう言えるのは、本当の自分を明かしたところで、排除されない人たちだけだ。』
『年末年始のイオンって、明日も生きていたいって自然に思える人からしたら、すっごく楽しい場所なんだと思う。私も、そういう目線で、あの中を歩いてみたかった。』
『優しい人はいつだって、どんなあなたでも受け入れるよという顔をしている。近しい関係になるために、家族や居住地などの情報を共有しようとしてくる。なんの悪気もなく、完全なる善意で。その居心地の良さに、居心地が悪くなる。』
『言葉にされていることなんて、この世界のほんの一部でしかないのだ。』
「ダイバーシティ」、「多様化」という言葉に一石投じる・・・どころの騒ぎでなく、ナイフを突き立てるくらいの激しさを含んだラストでは、
「法で人間の行動を取り締まることはできたとしても、思考まではコントロールできない!」という主張の展開があったのですが、
先日読んだ『一九八四年』と真逆の世界観で。
2022年の読書時間も、脳と心があっちこっち忙しくなりそうだ・・・!とワクワクするのでした。
紋佳🐻
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