『むかし僕が死んだ家』


「あたしは幼い頃の思い出が全然ないの」。

7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。

それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。

そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは。

超絶人気作家が放つ長編ミステリ。


別荘地に建つ、陽の光の届かない暗い家。

その家を捜索していくうちに、ひとつ、またひとつとヒントやアイテムが増えていき・・・まるで脱出ゲームに臨んでいるかのような臨場感あふれるミステリでした。


『あの子の前だと、あたし、自分で自分がよくわからなくなる。(略)自分でぶっておいて、真っ赤に腫れたあの子の腿を見て、突然恐くなったりして。』

途中から語られ出す「児童虐待」のエピソードには、胸が締め付けられました。

毎日子どもと二人きり、ストレスで自我を忘れる母、殻に籠って「無表情」で耐える子ども・・・

我に返ったときには罪悪感でいっぱいで、自分で痛めつけた子どもの手当てを泣きながらする母親だなんて、想像するだけで泣けてきます。

上質なミステリというだけでなく、そういった事実を伝えてくれる良い本でした。


28年前に出版された物語が、母となったいまの私に刺さる・・・これだから本と出会うタイミングって面白い。


紋佳🐻

読書