『波』2022年3月号


波、2022年3月号。


前号で前編を読み、面白い!と感動していた未発表だった遠藤周作『切支丹大名・小西行長 『鉄の首枷』戯曲版』ですが、

その解説で加藤宗哉さんが、『戦国の切支丹大名・小西行長の生き方と信仰に、作家は自分の人生の断面を見たのである。』とあって、ますます興味が膨らみました。

遠藤周作さんも行長の如く、親に連れられ「便宜的な洗礼」を受けたクリスチャンだったこと、
また母を棄てた父に、表上は「医学部を受ける」という約束で学費や下宿を許されていたものの「文学部を受験し合格する」など、その面従腹背ぶりは、まさに小西行長でした。

そういう目で見て読み返すと、益々面白い。


川本三郎さんの『荷風の昭和』は、文豪・永井荷風が遺した日記を元に、当時の空襲の様子や荷風さんの交友関係が毎号続くのですが、その日記の淡々としたこと。

戦争とはこんなにも醜いものである、というメッセージがあるわけでなく、そこにあるのは「日常」。

頻繁に繰り返される空襲が、何でもない事のように綴られている。

ひとの流れ、迷走する国策・・・

ひとりの人間の日常(日記)を読めば読むほど、そこに生きていた人間をノンフィクションとして感じ、
「戦争があった時代から現在までが地続きであること」を改めて実感するのでした。


紋佳🐻

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