『こうふく あかの』


結婚して十二年、三十九歳の調査会社中間管理職の俺の妻が、ある日、他の男の子を宿す話。

二〇三九年、小さなプロレス団体に所属する無敵の王者、アムンゼン・スコットの闘いの物語。

この二つのストーリーが交互に描かれる。

三十九歳の俺は、しだいに腹が膨れていく妻に激しい憤りを覚える。
やがてすべてに嫌気がさした俺は、逃避先のバリ島で溺れかけ、ある光景を目にする。

帰国後、出産に立ち会った妻の腹から出てきた子の肌は、黒く輝いていた。

負けることなど考えられない王者、アムンゼン・スコットは、物語の最後、全くの新人レスラーの挑戦を受ける。


長い長い、心情を吐露する場面があったり、

会話と会話の間に、ト書のような情景描写が続いたり・・・

まるで舞台を見ているかのようでした。


プロレスという馴染みのない世界に触れてみて感じたのは、「演じる側も、観る側も、本気である」ということ。

だから観る人の心を離さないのだろうと思いました。


ひさしぶりの西加奈子さんは、やっぱり刺激的で、前衛的で、個性的で、面白かった。

けど、4,000グラムの赤ちゃんの出産シーンは手に汗握りました。

・・・どうか安産でありますように(1ヶ月後)。


紋佳🐻

読書