『滅びの前のシャングリラ』


「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。 なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」

一ヶ月後、小惑星が地球に衝突する。

滅亡を前に荒廃していく世界の中で「人生をうまく生きられなかった」四人が、最期の時までをどう過ごすのか―。

圧巻のラストに息を呑む。

2020年本屋大賞作家が贈る心震わす傑作。


『あたしは一旦決めたことを違えるのは嫌いなたちで、妊娠しなかったら死んでも信士のそばを離れなかっただろう。
それと同じ強い気持ちで、そこまで惚れた男の子供をどうしても産みたいと思った。
だから逃げた。
子供のために、信士に我が子を殺させないために、全力で。』

不幸を背負ってまで、我が子とその父親の幸せを願う母親の強さに、胸が締め付けられる想いでした。


人類の滅亡まで1ヶ月。

食料・日用品を奪い合うために人々は殺し合い、
大量の自殺者で電車が機能しなくなり、
おかしな宗教によるテロ行為によって混乱が起き、
病院は患者で溢れかえって混乱を極め、
誰もが働かなくなることで、路上にごみが溢れ(ゴミ収集車が来ない)悪臭を放ち・・・

社会の混乱の描かれ方がとてもリアルで、恐ろしかったです。


凪良さんの物語には、いつも「世間から簡単に切り離されそうな人」、「傷つけられることに慣れすぎて痛みすら感じなくなっている人」が登場しますね。

けれど、ささやかな希望の光が届く物語。

人気の理由の、ひとつな気がします。


紋佳🐻

読書