『私の命はあなたの命より軽い』
東京で初めての出産を間近に控えた遼子。
だが突如、夫が海外に赴任することになったため、実家のある大阪で里帰り出産をすることに。
帰ってみると、どこかおかしい。
仲が良かったはずなのに誰も目を合わせようとしないし、初孫なのに、両親も妹も歓迎してくれていないような・・・。
私の家族に何があったのか。
表面上は穏やかに見えて、その裏に、なにかモヤモヤとした違和感を感じる・・・
そんな「気持ちの悪さ」を描かせたら右に出る者はいない、近藤史恵さん。
大好きです。
主人公が妊婦なのがいい。
神経質になってしまう説明がつくし、臨月になってくるとタイムリミット(それもいつ産まれてくるかわからないという制限)が生じてきて、焦燥感を煽られます。
突然決まった夫の海外赴任や、里帰り出産のための転院、新築になった実家のよそよそしさ・・・
どこを切り取っても、ザラザラとしていて、小さなささくれが次々に刺さっては、抜けなくなっていく感覚でした。
読者までナーバスな心地に。
『父と母のことを優しい人だと思っていた。だが、その優しさは自分たちが認めるガイドラインを守った人にだけ向けられるものだった。
そのことがどうしようもなくつらかった。
いまだにふたりは、自分たちが悪いとは思っていない。』
家族だからといって・・・いや家族だからこその、拗れたときの厳しさ、残酷さ。
ラスト1頁が、さすが近藤史恵さん!といった締めくくりでした。
紋佳🐻
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