『アヘン王国潜入記』


ゲリラとアヘン栽培!

7か月の仰天本格ルポ。

ゴールデン・トライアングルの村に住み反政府ゲリラと共に播種から収穫まで7か月間アヘン栽培。

それは農業か犯罪か。

タイム誌も仰天の世界初ルポ。

東南アジア民族抗争の発火点が明らかに!


こちらも、クラリネット吹きのお姉さまよりお借りした一冊。

いつもありがとうございます!


『けしは、花が咲いたあと、放っておくと実は炸開(割れてはじけること)せずに枯れてしまう。
実が炸開しないと種が散らない。
人間が手を貸して種まきしてやらないと育たないのだ。(略)
ケシ=アヘンがないと生きていけない人間を「アヘン中毒者」と呼ぶわけだが、人間がいないと生きていけないケシは「人間中毒植物」とでも呼べばいいのだろうか。
両者は互いに依存しあって共存しているのである。』

知らないことばかり。

ケシ(アヘンゲシ)は純粋に栽培植物であるので、世界中に存在しているいずれもが、人が育てているもの。

自生しているものは『ない』という事実。

だとしたら、現代まで脈々と栽培されてきた歴史もまた、すごい。

野生種も見つかっていないため、正確な原産地も不明なのだとか。
・・・なんてミステリアスなんだ、ケシ。

(加えて、タバコやコカインの原料であるコカなどの野生種も発見されていないらしい。
つまり野生種が絶滅し、すべて栽培種に替わられたほど大昔から、人類に愛されてきたということでもある。)


ワ州という、アヘン王国に危険を承知で踏み込んだルポ記でありながら、政治的・歴史的学びの多い学術書としての一面もある良書でした。

『ビルマ人の商人は中国商人に比べ、ずっと大らかで明るい。
中国人はこちらが買う気がないとわかったり交渉がまとまらないと、すぐにそっぽをむくし、客に対して愛想というものがない。
ビルマ人はこちらが値切りすぎても「そんなんじゃ売れないわよー」と言ってニコッとする。
「おねえさん、美人だけど性格はよくないな」とビルマ語で軽口をたたくと、屈託なくケラケラと笑う。
そして、しまいにまけてくれたりする。
典型的な古き良き東南アジアの匂いがする。』

市場の雰囲気がとても伝わってくる、この一節に、ビルマの風を感じました。

凄く良い。

『(略)さて、ビルマ商人はいいのだが、ビルマ製品はというと、これがいただけない。旧イギリス植民地の本領発揮で、やたらと英語を使っているから、ちょっと見はいいのだが、実は中国製品よりはるかに劣る。
私はパンツとヒゲソリを買ったが、パンツは三日で尻が裂け、ヒゲソリは一度使っただけで柄がぽっきり折れた。
これも古き良き東南アジアの匂いといえなくもないが。』

こんなオチまでついていたり。


7ヶ月もの間、電気も水道も当然ないようなムラで暮らして、時に原因不明の病(医者が不在)にかかって生死をさまよったりしてまで綴られたルポ記。

自分には出来ない、見ることの出来ない世界。

見せていただき、ありがとうございます。

面白かった。


紋佳🐻

読書