『母という呪縛 娘という牢獄』


深夜3時42分。

母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」
と投稿した。


髙崎妙子、58歳(仮名)。

遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。

夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかり(仮名)と二人暮らしだった。

異様なことも判明した。

娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。

結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。

母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは「母は別のところにいます」などと不審な供述をした。

6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。

その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。

一審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。


母と娘―

20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。

公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。

殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。


あかりさんによる、8ページわたる母親への謝罪・憤慨・諦念・決意のきもちを綴った手紙に、胸をうたれていたら・・・

『あかりの意志で家出前に書いた置き手紙のように見えるが、違う。
母がパソコンで原文を作成し、あかりに手書きで清書させ、祖母と大叔母に送ったものである。(略)』

・・・え。

鳥肌がたちました。

その辺のホラー小説より、よほど恐ろしい。


精神状態の破綻した母親からのLINEの長文メッセージは、とにかく恐ろしかった。

絶対的に立場の弱い子どもに対して、「お前」、「バカ」、「死ね」・・・

相手を傷付け、叩きつぶすためだけの言葉の暴力に、読んでいるこちらまで気が狂いそうになります。


医学部、助産師・・・と、目標を高く設定し、子どもを束縛、軟禁。

ところが一身に期待を傾けているようでいて、端から無理だと決めつけ、浴びせるのはネガティブな言葉ばかり。

いったいこの人は何がしたいのだろうと、第三者から言わせれば、不可解極まりない母親でした。


虚しい「たられば」を、それでも思わずにはいられない。

親子という関係性において、風通しの良さの必要性が痛切に感じられる一冊でした。


紋佳🐻

読書