『ゲーテはすべてを言った』


【第172回芥川賞受賞作】

高明なゲーテ学者、博把統一は、一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。

ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るが・・・。

ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何か、学問とは何か、という深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。

若き才能が描き出す、アカデミック冒険譚!


「ちょっと休憩しましょうか。ときに、『ゲーテはすべてを言った』って言葉があるんだが、聞いたことある人はいる?例えばね、君らが気に食わない奴に議論をふっかけられた時、『僕はあなたの意見には反対だけど、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る』と格好つけたいとするね。あるいは結婚式のスピーチを頼まれて、『結婚すれば後悔するかもしれない。結婚しなければ必ず後悔する』と言って、一笑い取りたいとする。
ちなみに1個目はヴォルテールの有名な言葉ね。もう一つは僕が考えて、義姉の結婚式で披露し、妻から『縁起でもない』と後で散々叱られた言葉(ここで数名の学生は笑う。本当に可笑しいというより、教授が身内話を出すときは、ジョークを言いたいのだと判断して笑うのである)。
何となく、ソクラテスかキルケゴールかパスカルがそんなことを言っていたような気がしていたんだけど、そういえば全員漏れなく結婚に失敗してた(また笑う。教授が大思想家の名前を出す時は・・・・・・以下同文)。(略)」

大学の講義の様子、学生との交流がとてもリアルで、ああ、教授たちはこう思っていたのだろうかと懐かしいきもちに。


「済補」と書いて「スマホ」、「非道く」と書いて「ひどく」と読ませる、そんな作品。

刺さる人には刺さること間違いなし。


見返しの遊びに色の異なる髪が3色使われているのが、最後には1色になっているのだけれど、私なりの考察で(いろいろ考えていたら2つくらいその理由が思い浮かんだのですが)、とりあえず納得。

読み終えたあと、また冒頭から読み返して「ああなるほど!」となったりして。


とにかく仕掛けがいっぱい、学術的な刺激いっぱいな作品でした。


紋佳🐻

読書