『文盲』


世界的ベストセラー『悪童日記』の著者が初めて語る、壮絶なる半生。

祖国ハンガリーを逃れ難民となり、母語ではない「敵語」で書くことを強いられた、亡命作家の苦悩と葛藤を描く。


『悪童日記』を貸していただいたお姉さまより、こちらもお借りしました。

あっという間に読み切れる文章量なのですが、その内容はとても重く、まるで彼女の作品のような鬱鬱とした内容でした。


『スイスに来て五年経った。わたしはフランス語を話す。けれども、読むことはできない。文盲に戻ってしまった。四歳で本を読むことのできたこのわたしが。(略)』

難民として国境を越えるということは、知らない言葉を強いられるということ。

話すことはできるようになるかもしれない。

けれど文章を読めるようになるまでには、相応の努力と時間が必要。

文字を読むことが好きだったひとにとって、それは想像を絶する苦痛であろうことは、想像にかたくありません。


『わたしは、自分が永久に、フランス語を母語とする作家が書くようには、フランス語を書くようにならないことを承知している。(略)
この言語を、わたしは自分で選んだのではない。たまたま、運命により、成り行きにより、この言語がわたしに課せられたのだ。
フランス語で書くことを、わたしは引き受けざるを得ない。これは挑戦だと思う。
そう、ひとりの文盲者の挑戦なのだ。』

タイトルの意味が本当の意味でわかったとき、アゴタ・クリストフさんの生涯に思いを馳せずにいられない、そんな随筆でした。

大ベストセラーという輝かしい経歴の裏に、戦争がもたらした破壊・苦しみが静かに横たわっていることを、読者として忘れてはいけないと胸に刻みました。


紋佳🐻

読書