『やっぱり食べに行こう。』


ゴッホもこんなふうにパンをかじりながら、サン=レミからパリへと戻ったのかもしれない。

小説、アートと同じくらい「おいしいもの」が大好き!

『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』『たゆたえども沈まず』などの取材先で食べた「思い出の一品」をつづる満腹エッセー集。


関西学院大学文学部日本語文学科と、早稲田大学の美術史科を卒業され、数々の美術館で働かれたのちに、アートにまつわる小説を生み出し続ける原田マハさん。

芸術と美食は切り離せない文化だとは思っていたけれど、実際その通りでした。


『突発的に山形・米沢へ行ってきた。アートに「会いに」出かけたのである。私は「アートは友だち」であると思っている。だから、アートを「見に」行くのではなく、「会いに」行く。』

アートに対する愛がびしびし伝わってきたかと思えば、芸術へのリスペクトも止まらない。


『私は地方紙で安土桃山時代の絵師たちの物語を連載したのだが、その中のひとりが狩野永徳である。連載中に、「洛中洛外図」がいかにして描かれたか、というくだりをひとしきり書いた。いかにして?もちろん、誰も知らない。永徳が活躍していた当時の京都の街並みや風俗をこと細やかに描き込んだこの屏風絵は、美術的価値はもちろんのこと、歴史的価値が極めて高い。多くの専門家が本作を研究してきたが、いかにして描いたかを知ることはできない。だからこそ、小説家の想像力の翼がはばたくのだ。』

原田マハさんの真骨頂、「アート小説」。

事実と架空があえて分からないように織り交ぜているそう。

その想像力も、地道な調査・取材の基盤があってのこと。


『まず史実の部分に関する文献や資料を調査し、その上で詳しく取材を行う。小説を書き始めるまえの「基礎作り」はもっとも大切な作業。なぜなら、思いっきりフィクションを積み上げてもびくともしないほどしっかりした基盤を作らなければ、物語がどこかで破綻してしまうからだ。』

その取材のために世界中を飛び回りながら出会った、美味しい食べ物のエピソードたちは、どれも一期一会な感動にあふれていて、ほとんど海外に行ったことのない私にとって、羨ましさで苦しくなるほどでした。


『ね、やっぱり食べに行こう!』で終わるあとがきの爽快感。

おいしいものをたのしんでいる人は、とにかく元気だ。


紋佳🐻

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