『踏んでもいい女』
配給なんてものは、腐りかけのやさいばかり。
畑の作物は葉も茎も根もみんな食し、川原の雑草は奪い合い、買い出しは基本的に物々交換。
そんな、生きるために、みんなが苦しんでいた戦時中のおはなし。
『戦争には負けるのだから、国のことなんて考えなくていいの。自分のことだけ考えて、自分を大切にして行きなさい』
という裕福な生活を送る貴子と、
お湯を沸かす薪が手に入らず、営業もままならない銭湯の娘、真砂代。
「負けたら占領されて、植民地にされてしまうんですよ。どんなひどい目にあうか、わかっているんですか」
「長い目で見れば、そんなことは重要ではないわ。たとえ植民地にされても、追い出されて国土を失っても、民族の誇りを失わなければ、その国は必ず復活する。そのときにこそ、国民は愛国心を持って国のために働けばいいのよ。心配しなければいけないのは、戦争に負けることではなく、負けることによって、民族意識を失ってしまうこと。」
敗戦へと向かって刻々と移り行く戦況を背景に、悲惨な戦いに翻弄されていくふたりの女性の運命は・・・
まるで当時にタイムスリップしたかのような、景色や音やにおいまで感じられるリアルな描写に感激したのち、本書が処女作と知り脱帽しました。
紋佳🐻
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