『宿無し弘文』


「ハングリーであれ、愚直であれ」(スティーブ・ジョブズ)
この言葉は禅の教えだった!

スティーブ・ジョブズの「生涯の師」で、iPhoneやiPodなどの革新的製品の設計思想にヒントを与えた日本人僧侶・乙川弘文。

足かけ8年、関係者への徹底的な取材の中で浮かびあがってくる、ジョブズとの魂の交流。
僧侶としての苦悩。

「日本曹洞宗の明日を担う」とまで期待された若き僧侶は、なぜ故郷を捨て、アメリカに渡ったのか。

ある人は「あんなに優れた禅僧はいない」と激賞するが、「女にだらしない、酒浸りの男だった」と批判する人もいる。
彼はいったい何者だったのか。

そして、スイス山奥での突然の死。その真相は。


インタビューに答える形での独白が続いて、恩田陸さんの『Q&A』、湊かなえさんの『告白』を読んでいるかのようでした。

誰かに依存せず、守られずに生きていける強さをもった人だったんですね。
ただ人とのご縁、タイミングにとても寛大な人だったが故のダメンズっぷりが見事でした。

当時、どうしてアメリカのヒッピーに「禅」がウケたのか、その歴史的背景も初めて知りました。

たくさんの友人、弟子たちに神格化されたあと、最後には実の娘に娘にけちょんけちょんに言われるところが、なんとも人間らしくてよかったです。

最後のお役所とのやりとりも、だらしが無いとも言えますが、
弘文さんだし・・・なんだかお洒落、と受け取れる私も、すっかり毒されていますね。


紋佳🐻

読書