『一汁一菜でよいという提案』


食事はすべてのはじまり。

大切なことは、一日一日、自分自身の心の置き場、心地よい場所に帰ってくる暮らしのリズムをつくること。
その柱となるのが、一汁一菜という食事のスタイル。

合理的な米の扱いと炊き方、具だくさんの味噌汁。


「料理を作る」と書いても、「料理を造る」とは書かない。
それは、「造る」という言葉には、人間にはつくり出せないもの、という意味があるから。
だからお酒やお味噌には「造る」という字を使う。

でも唯一、お刺身だけ「お造り」という字を使うのは、魚を神と信じ、魂はお返しして肉を恵みとしていただくという古代の人の心が残されているから。

・・・そんなお話や、

昔は角が崩れただけで売り物にならなくなった豆腐が(貧しい家の子が買いに来たときにはわざと角を崩して、売り物にならないからと安く売ったという人情話もあったそう)、

いまではプラスチックのパックの中で、角が崩れていても気にせず売られていて、返せばパックの「寝ぐせ」が付いている。

『こうして一つ、また一つ、と美しいものがなくなっていく』

という日本人の美意識のお話も興味深かったです。


2013年12月に、和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録されたその理由が、

・素材の持ち味、旬をたのしむ
・栄養バランスに優れている
・暮らしの行事とともにある(ちらし寿司、お節、七草粥など)
・自然の移ろいを表現する

というもので、

『これはまさに、(略)家庭料理のことだとわかります。にも関わらず、メディアは、名のある和食の料理人ばかりに、マイクを向けるのはなぜでしょう。(略)「おばあちゃんのお料理が、無形文化遺産になったんだよ。すごいね、よかったね。おめでとう」と言ってあげて下さい。』


日本人が大切にしてきた食文化に感心、感動する一冊でした。


紋佳🐻

読書