『八月の銀の雪』


不愛想で手際が悪い――。
コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。

会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。
その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り・・・(「十万年の西風」)。

科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。


「参考文献」が4ページにわたってびっしりと。
伊予原さんの文章との向き合い方、物語への想いがそこに表れている気がしました。

地球の構造の話、クジラの生態、珪藻アート、
新聞社がその昔速報を伝えるために伝書鳩を使っていたこと、
原子力発電所とそこで働く人の想い・・・

五篇ある物語の、どれを読んでも、新しい発見、知識が待っていて。

知識欲が満たされるばかりでなく、人間臭い登場人物たちと、彼らに向けられた、あたたかく心に響く言葉の数々には泣けました。

その本を手に取らなければ知らなかった歴史や、専門的な知識との出会いをたいせつに胸にしまって。


紋佳🐻

読書