『ドキュメント』


湊かなえ最新刊!
興奮と感動の高校部活小説!

人と人。対面でのコミュニケーションがむずかしくなった今だからこそ、
「”伝える”って何だ?」ということを、青海学院放送部のみんなと、真剣に考えてみました。
―湊かなえ


中学時代に陸上で全国大会を目指していた町田圭祐は、交通事故に遭い高校では放送部に入ることに。
圭祐を誘った正也、久米さんたちと放送コンテストのラジオドラマ部門で全国大会準決勝まで進むも、惜しくも決勝には行けなかった。

三年生引退後、圭祐らは新たにテレビドキュメント部門の題材としてドローンを駆使して陸上部を撮影していく。
やがて映像の中に、煙草を持って陸上部の部室から出てくる同級生の良太の姿が発見された。

圭祐が真実を探っていくと、計画を企てた意外な人物が明らかになって・・・。


放送委員会が舞台となっていて、全国大会を目指し映像作品を作っていく様子が描かれているのですが、ドキュメンタリー作品の極意、何かを伝える、報道する際にたいせつな部分について深く触れていたのがよかったです。

新聞社、メディアから取材を受けて、それがどのような記事になるかは、それぞれの裁量にまかされる。
本人が思っていないようなことが見出しになり、誇張され、印象が操作される。

これはエレナのインタビューのときに私も痛感させられたことで、「伝えてほしいことを伝える」ということと、「読み手が興味を持つ、感動する、面白いと思うものを伝える」ということが、どうして天秤にかけられなくちゃいけないんだろうと、驚きました。
(それ以来、世に出ているインタビュー記事をすべて鵜呑みにするのをやめました)


『ネットの記事を疑え、と学校や周囲の大人たちから指導を受けることはあっても、新聞記事を疑え、と言われたことはない。』

ああ、好き。

「報道側が伝えたいことと、当事者が伝えてほしいことと、視聴者が知りたいことの溝を埋めるプロ」こそが、真のジャーナリストですね。


最終章もいいアクセントでした。

社会現象をそこにぶつけてくるとは。


仲間とぶつかりあったり、常識や世間に楯突いたり・・・失敗することがなかなか許されない年齢になってきた自分には眩しすぎて、学生もの、学園ものって、直視できないような気になっていたのですが、湊さんの文章はストンと落ちました。

放送委員会が舞台ということで、懐かしさいっぱい、色んなことを考えさせられて読了。

(イヤミス系じゃなくて青春系かあ)
と思って読み始めたものの、さすがの湊さんでした。


紋佳🐻

読書