『カミサマはそういない』


変な予感がするんだ。
扉の向こうで、何か恐ろしいものが、僕を待っている気がして―。

目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。
園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。
ここは死後の世界なのだろうか。
そこへナイフを持ったピエロが現れ・・・(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)。

僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。
戦争が終わるまで。
しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。
そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され・・・(「見張り塔」)

など全7編を収録。

現代日本、近未来、異世界―様々な舞台で描かれる圧倒的絶望。


この物語に、救いの「カミサマ」はいるのか。
見たくない、しかし目をそらせない、人間の本性をあぶり出すダークな短編集。


独特ーーー!

私は嫌いじゃないです。

はじめましての深緑野分さんでしたが、かなり個性的な作家さんですね。


7篇から成る短編集でしたが、どのお話も設定が特殊。

この世界ではなかったり、ずっと先の未来の話だったり・・・読み手の想像力も必要な世界観でした。

でも、読者の想像力に頼る前に、「本当にそういう世界になったら、こんな問題が出てくる」とか、「こう変わっていく」といった、深緑さんの想像力が、まず素晴らしくて!

よくある、「設定は凝っているけど、内容が薄くて全体的に安っぽい」ということもなく、きちんと『その目で見て、文章にした』感じがあって、好感が持てました。


タイトルからも察せる通り、どんよりとした、嫌~な後味が待っています。

私は好き。


紋佳🐻

読書