『星を掬う』


町田そのこ 2021年本屋大賞受賞後第1作目は、すれ違う母と娘の物語。

小学1年の時の夏休み、母と二人で旅をした。

その後、私は、母に捨てられた―。

ラジオ番組の賞金ほしさに、ある夏の思い出を投稿した千鶴。
それを聞いて連絡してきたのは、自分を捨てた母の「娘」だと名乗る恵真だった。

この後、母・聖子と再会し同居することになった千鶴だが、記憶と全く違う母の姿を見ることになり―。


妊婦さんが出てくるのですが、一般的にマタニティブルーと呼ばれる症状、内容には個人差があるというお話に、深く共感。

『「胎動が気持ち悪いというひともいるらしい。
腹の中に何かいる感覚がどうしても我慢できないから、せめて胎動を感じないようにしてほしいって(中略)
でも産み落としたら可愛がってたそうだ。
その話の母親に関しては、自分の中にもうひとりいるって状況が、受け入れられなかったんだろうな』

私も周りの人から、『お腹の中にいる今が、いちばん幸せでしょう』とか、『産んじゃうと寂しいよね』とか、妊娠中の幸せに対する共感を、よく求められます。

でも1人目の時もそうだったし、2人目の今回も、特に「妊娠しているから幸せ」だと思ったことは一度もありません。

そんな自分は、やはり「母性が足りない」のかなと、1人目の時は悩んだりしたけれど、「産んでしまえば、我が子はかわいいと思える日が来る」(←私の場合は意思疎通が出来るようになってから面白い&可愛いとようやく思えるようになった)ということを知っていたので、今回は悩んだりせずに済んでいます。

母親もそれぞれ人間で、個性があって、過去がある。

世間から嫌煙されそうな「母親としての自覚の濃度」の社会的ムラさえも、丁寧に文章にしてくれる町田さんに、救われる思いです。

いろんなお母さん、いろんな愛のカタチがあって、それでいい。


『誰かを理解できると考えるのは傲慢で、寄り添うことはときに乱暴となる。
大事なのは、相手と自分の両方を守ること。
相手を傷つける歩み寄りは迷惑でしかないし、自分を傷つけないと近づけない相手からは、離れること。』

認知症の病に、身内がどんどん侵されていくという現実を、鋭く突きつけてくる描写には、胸がいっぱいに。

読み終えたあとは、タイトル『星を掬う』に、こころが震えました。


紋佳🐻

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