『癒し屋キリコの約束』


昭和歌謡を流す純喫茶「昭和堂」のオーナー・霧子は、四十路の美しい女性だが、金にはがめつく、性格はだらしない。

営業中でも、お気に入りのロッキングチェアに腰掛けて、漫画片手にビールをごくごく。

雇われ店長として働くアラサー女性・カッキーと、愉快な常連客たちが、なんとか店を支えている。

そんな「昭和堂」には裏稼業が。

町の人々の悩みを解決する「癒し屋」だ。

噂が噂を呼び、癒しの依頼はひっきりなしだが、依頼者が持ちかける無理難題に、カッキーと常連客たち「アシスタント」はいつも大わらわ。

しかも、霧子の奇想天外なアイディアで、結果は必ず予想外の展開へ!

そんなある日、店に霧子への殺人予告が届く。

明日への希望が、心をやさしくほぐす、爽快エンタメ小説。


『あんた、覚えておきなさいよ。才能ってのはね、成功するまで絶対に努力を止めないって、自分自身を説得し続ける能力のことを言うのよ。』

『あんたに言っとくけどさ、そもそも人生には、生きる意味なんて何ひとつないんだよ。
何にもないまっさらなところでいろんな経験をしてさ、その経験にたいして、自分なりに意味付けをして、それを味わうのが人生じゃん。違う?』

悲しみや怒りで、凝り固まった相談者の心を、『荒療治』で解していく霧子さん。

口調は荒っぽいし、何よりもお金が大好きで、お酒にだらしない霧子さんだけど、言葉には誠実さと温もりがこめられていて、読んでいるこちらまで癒されました。


舞台である喫茶店が昭和風で、レコードでかける歌謡曲の歌詞が、各章のテーマとなっていて。

そんなレトロ感も味わえる一冊でした。


森沢さんの他作品の登場人物が出てくるのも、ファンにはうれしいサプライズ。


紋佳🐻

読書