『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』


夫に別れを告げ家を飛び出し、宿無し生活。どん底人生まっしぐらの書店員・花田菜々子。

仕事もうまく行かず、疲れた毎日を送る中、願うは「もっと知らない世界を知りたい。広い世界に出て、新しい自分になって、元気になりたい」。

そんな彼女がふと思い立って登録したのが、出会い系サイト「X」。

プロフィール欄に個性を出すため、悩みに悩んで書いた一言は、「今のあなたにぴったりな本を一冊選んでおすすめさせていただきます」―

これは修行か、冒険か。

「本」を通して笑って泣いた、衝撃の実録私小説!


タイトルだけ読むと、「ヤバい人が書いたヤバい体験記なのでは」と思ってしまうけれど、読めば読むほど、著者は、ごく普通の感覚を持った常識人で。

そんな「ヤバくない人」が、「ヤバい人」と出会い経験した、楽しいことから傷付けられることまで、包み隠さずに綴られた、マッドシティの冒険譚でした。


まさに自分も、大学生のときにはまっていたのが「普段本を読まない知り合いに本を処方する」こと。

友人や、バイト先の人、いろんな人にその人に合いそうな本をオススメしては、その感想を聞くのがたのしくて。
(いま思い返すと、何と押し付けがましい親切だろう)

そんな自分が、このタイトルに惹かれるのは必然でした。


「本を勧めることが好きになった経緯」がまた良い。

ヴィレッジヴァンガードに魅せられ、下北に住み通い詰め、新店舗のオープニングスタッフとして働き始めたのち、一時は店長になり、徹夜してポップを書いたり、本の棚をつくるのが幸せだった。

が、時代の流れと共にキャラクター雑貨に売り場を占拠されるようになり、本を売ることに力を入れなくなった会社への不満は募るばかり。

そのフラストレーションの大爆発を、我々は目の当たりにすることができます。


行動しなければ何も起こらない。

こちらまで奮い立ってくるようなこの読後感は、予想もしていませんでした。

巻末に『本書ですすめた本一覧』が付いているのも良かった。

何冊か読む予定です。


2021年にドラマ化していると知って、さっそく観始めました。

瀧本美織さん、森崎ウィンさん・・・好きな俳優さんがたくさん出演されていてうれしい。


紋佳🐻

読書