『世界でいちばん透きとおった物語』


大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。

宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。
それが僕だ。

「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」

宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。
編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだが―。

予測不能の結末が待つ、衝撃の物語。


『僕は彼女の言葉の意味について考えていた。
社交辞令だろうか。それとも僕も少しはうぬぼれていいのか。
残念ながらそのどちらでもなかった。もっとずっと後になってわかることだけれど。』

「僕」の視点で、父が遺した未発表の原稿のありかを探っていく物語なのですが、こんな風に、時々読者を突き放す瞬間があって。

「いま」を一緒に歩んでいたつもりが、突然距離を取られたように感じる表現が、主人公の孤独を物語り、際立たせていて。

読者側は、どこまでも寄り添わせてもらえない。

そんな感覚が、読んでいてもどかしい物語でした。

読めば読むほど、近づけない。切ない。


そして物語を読み進めていくと現れてくるミステリ要素。

なるほど、ミステリ要素がある展開ね・・・

ん?

・・・えっ!

ま、ちょっと待って・・・も、もしかして・・・

うわぁあああああああああ!!!!

となります、終盤。

ぜひ体験して欲しい。


紋佳🐻

読書