『わたしたちは、海』


クラスの女子たちが、タイムカプセルを埋めたらしい。
6年3組のぼくは、親友のシンイチとヨモヤとともに、遠くの煙突の麓にある公園まで自転車で行ってみることにした―「海の街の十二歳」

小学校教諭の岬と保育士の珊瑚。
幼なじみの二人は休日に近くの海へドライブへ行った。
渋滞にはまった帰り道、二人は光るスニーカーをはいた4歳くらいの子供が一人で歩いているのを見つけ―「岬と珊瑚」

高校の同級生・潮田の久しぶりのSNSを見ると、癌で闘病中とあり見舞いに訪れた波多野。
数ヶ月後、潮田は亡くなり、奥さんのカナさんから、散骨につきあってほしいと言われ―「鯨骨」

海の街にたゆたう人々の生の営みを、鮮やかに描き出した傑作小説集。書き下ろし1編を含む全7編。


『男だ、女だ、と話をすること自体が難しくなっている時代に、女性ファッション誌の価値はどこにあるのだろうか。』

くぅ、痺れる。


年齢も性別もさまざまな主人公たちの短編集。

特に、ファッション誌の副編集長がママ活にハマっていくお話も切なくて良かった。

どうして1986年生まれの男性が、40代後半のバリキャリ女性の心境をこんなにも丁寧に描けるのだろうと、感心してしまいました。

カツセマサヒコさんが、10年後、20年後に描く、枯れかけの女性(褒めてる)を、心から楽しみにして。


一作目の『徒波(あたなみ)』は、もう大好物過ぎて感動。

『(略)
「今日は、やってるかな」
「何が?」
「映画館」
「ああ」
「昨日、休みだったんだよ」
「ああ、俺も昨日、行こうとした」
「え、あのハンバーグのあとに?」
「うん」
「じゃあ、同じ日に行こうとしてたんだ」
その言葉を聞きながら、壁一面に並んだリキュールボトルを見ていた。』

まるで舞台を観ているよう。

こんなにも余白を残して、良い意味で粗い会話劇を綴る勇気よ。

その昔付き合ったことのある男女がひさしぶりに再会し、もう一度熱く燃えるような気配すら、もはや無い・・・

そんな雰囲気が、一言一言が短いこの会話劇に醸し出されていて、たまりません。

とても、好きでした。


紋佳🐻

読書