『作家と珈琲』
毎日の食卓で、行きつけの喫茶店で、異国の地で味わう、一杯の珈琲。
昭和の文豪や現代の人気作家によるエッセイ、詩、漫画、写真資料を収録。
珈琲の香りただよう52編。

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かつてこんなに豪華な本があったでしょうか。
震えます。
昭和の随筆が多めかと思いきや、明治や大正の「純喫茶の前身ともいわれるミルクホール」(主に牛乳や軽食を提供することを目的とした簡易な飲食店の形態)の話など、知らなかった世界を覗くことができました。
『喫茶店でゆっくりと本を読む人に親近感をおぼえるのは、ぼく自身がそうだったからで昭和二年あたりから始まった。
そのころのコーヒーは十銭で、中央線の荻窪や中野や東中野にいい古本屋が幾軒もあった。
小遣いといっても三円どまりだったけれど、最初の古本屋で十銭か二十銭まけてもらうと、すこし歩いてから喫茶店にはいって、買った本をパラパラとやる。
そのときの気持ちはなんともいえない。
十銭のコーヒーで疲れがなおると、つぎの古本屋を二軒か三軒のぞいて、またコーヒー代を浮かす。
おまえが病気をしないのは古本屋をぶらつくから足がじょうぶになっているせいだよ、と医者にいわれたことがあった。』
(植草甚一)
ああ、時代も物価も違うけれど、共感しかないこの感覚。
『「いつも喫茶店ですね」
と、よく言われる。
私自身のことでなく、私の小説の登場人物のことだ。
もちろん、それはアルコールの全く飲めない私が、バーという所はほとんど出入りしたことがないせいでもある。
おかげで、私の小説の登場人物はビールもカクテルも口にできず、時には甘味喫茶でお汁粉をすするはめになる。
ロマンチックな会話は弾みそうにない。』
(赤川次郎)
赤川次郎さんをはじめ、芝居好きの人なら誰もが知るあの小田島雄志さんのエッセイも入っていて、胸が高鳴りました。
随筆を拝読するのは初めての方ばかり。
別役実さんの文章はもはや、ただの悪口だし(好きです)。
文章だけでなく、のらくろの田河水泡さんや、水木しげるさんの漫画まで。
タイトルと表紙に惹かれて手にしましたが、歴史と文学をめぐる壮大な旅を終えた気分です。
紋佳🐻









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