『恋とか愛とかやさしさなら』


プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。

カメラマンの新夏は啓久と交際5年。

東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。

「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。

啓久が”出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。

信じるとは、許すとは、愛するとは。

男と女の欲望のブラックボックスに迫る、著者新境地となる恋愛小説。


一穂さんで、本屋大賞ノミネート作品で・・・
読まない理由が見つからない!ということで拝読。

『この人は、芯からカメラマンだ。呆れと憧れが同量ずつ湧き上がる。そして思い知らされる。玲子のところで何年下積みのまねごとをしようが、自分はカメラマンにはなれない。
玲子もそう思っているし、そう思っているのを新夏が知っているのも知っている。だから新夏は、玲子を尊敬しながら時々憎んだ。』

地の文に、モノローグに近い生っぽさがあるのがとても好き。

登場人物の葛藤や、言葉にならない混沌とした心理状態が、リアルタイムで伝わってくる。

一穂さん自身が、作品の中でもがき続けているのがわかります。


女性目線と男性目線それぞれから描かれた、『恋とか愛とかやさしさなら』と、『恋とか愛とかやさしさより』の二篇が収録された作品。

読み終えた後に表紙の裏の短編を読むと、なんとも言えない切なさに襲われて胸がいっぱいになります。

すごい仕掛けだ・・・。


色んなことを言うひとたちが出てきて、価値観の異なる人間同士の交流がまた現実的。

自分ならと悩まずにいられないし、自分の直感を信じることの恐ろしさもまた抱きつつ、読了です。


紋佳🐻

読書