『カフネ』
2025年本屋大賞受賞作!
【第8回未来屋小説大賞】
【第1回あの本、読みました?大賞】
一緒に生きよう。
あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。
この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。
最愛の弟が急死した。
29歳の誕生日を祝ったばかりだった。
姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。
無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。
実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。
家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。
久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。
食べることは生きること。
二人の「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく。

『もう何ヶ月も、いや何年も、自分に価値を感じられずに生きてきた。もう自分は誰にも愛されず、必要ともされないと思っていた。
けれど今、誰かの役に立つことができた。
たったの二時間、それもたいしたことではない。それでも今、ありがとうと言ってもらえた。
今、私はあの人を助けたのではなくて、助けてもらったのだ。』
妊活を諦め、離婚届を突きつけられ、自尊心をすっかり搾り取られていた主人公が、生きる希望の種をぽつりぽつりと拾い集めていく姿に胸を打たれました。
少子化のこの時代に、「子どもがほしいのに授からない」人のきもちを、細やかに描写していてとてもよかった。
子どもが本当にほしいのかという自問自答、葛藤・・・なにが正解なのか、幸せなのか。
考えさせられます。
『子供を産むということは結局のところ親のエゴだと薫子も思う。それでも、いったい何処から噴き上げてくるのか自分でも分からない欲望と焦燥に駆られて、最先端の医療技術を金で買い、肉体の老いと運命に逆らって子供を得ようとした。
自分は親となるに値する人間なのか、この世にひとつの命を生み出し、その存在に全責任を負うことができるのか、そもそも産むという行為は正しいのか、本当なら考え抜かなければならないこと答えを出す前に、時間がない、時間がないと思考を停止させ、ひたすら自分の子宮に命を宿らせることだけを考えた。』
終盤、自分のきもちと真っ向から向き合う主人公のモノローグに、出先なのに涙が止まらなくなりました。
複雑な家族の形、愛の形、経済的に裕福なことと精神的に豊かなこと・・・
自分が母親だからこそ刺さる瞬間、打ちのめされる瞬間がたくさんありました。
こりゃあ、本屋大賞だ。納得。
紋佳🐻









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