『わたしの知る花』


「あんたは、俺から花をもらってくれるのか」

虫も殺せぬ優男、結婚詐欺師・・・?

77歳で孤独死した老人の、誰も知らない波瀾に満ちた意外な人生とは。

『52ヘルツのクジラたち』町田そのこの新作は、一人の男と美しい花を巡る物語。


『涙を拭くと、父に殴られた頬が痛んだ。でもその痛みが、退路はないことを教えてくれる。』

こころがつよいってどういうことかを、男尊女卑の時代の生き方で見せてくれる。

ひとりの女性として、読めば読むほど苦しくて、でも悔しくて。


『頽(くずお)れそうになるのを耐え、息子を成人させるまではと働いて、そうこうしていたら息子は素敵なお嬢さんを連れてきた。』

一緒に苦しんだぶん、共にしあわせを噛み締める。噛み締めてしまう。


『最後まで、生きていくしかないんだよねえ。どれだけすれ違っても、大事な相手も一生懸命生きてると思って、願って。ひとは、それしかない。たまに会えたら、めっけもんさ』

こんなの、泣くしかない。

幸せについて、人生について、静かに考えるきっかけとなる作品でした。

町田さんの作品の中でも、この作品がトップクラスで好き!と思えるのは、自分がある程度歳を重ねてきて、娘の気持ちも、母の気持ちも、分かるようになってきたからか。

いつか実感することになるのであろう、お年寄りのきもちもしみじみ体験することができて、町田さんの文章力に感動しっぱなし。


すれ違いに、勘違い―

ひとの想いはときに、時を超えて相手に届くこともある。

最期まで、届かないこともある。

届かない想いを抱きしめて生きる人のつよさに、圧倒されました。


表紙のイラストも含めて、とてもすき。

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紋佳🐻

読書