『ガラスの海を渡る舟』
大阪の心斎橋からほど近いエリアにある「空堀商店街」。
そこには、兄妹二人が営むガラス工房があった。
兄の道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調したり、他人の気持ちに共感したりすることができない。
妹の羽衣子は、道とは対照的に、コミュニケーションが得意で何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいる。
正反対の性格である二人は互いに苦手意識を抱いていて、祖父の遺言で共に工房を引き継ぐことになってからも、衝突が絶えなかった。
そんなガラス工房に、ある客からの変わった依頼が舞い込む。それは、「ガラスの骨壺が欲しい」というもので―。
『水を縫う』『大人は泣かないと思っていた』の寺地はるなが放つ、新たな感動作!
相容れない兄妹ふたりが過ごした、愛おしい10年間を描く傑作長編。

周りの読書友だちさんで読んでいらっしゃる方が多く、気になり手に取りました。
『熱した油に鶏肉を落とすと、小さな泡がいくつも生まれる。なにかを油で揚げるときのぱちぱちという音が好きだ。拍手みたいに聞こえるから。』
寺地はるなさんは初めましてだったけど、こういう丁寧で繊細な描写、好きです。
大阪が舞台なので、会話はもちろん関西弁。
『「お兄ちゃん、三田村の連絡先教えて」「なんで」「決まってるやんか!呼び出して一発殴ってやらな気が済まんわ!」』
視野が広くて慎重に考え事をする兄と、関西弁のテンポが軽妙で、若さ全開な妹。
妹が友だちと女子会をしている描写でも、「関西弁」の良さがとても出ていて素敵で。
(関西弁を話す地域に生まれ育っていたら、人生また違っただろうなあ)と思わずにはいられないのでした。
「忘れたくないことを忘れない為に骨壷を手元に置いておきたい」兄と、
「死が避けられない出来事なら、普段は目を逸らしていたい」妹の、それぞれの感情の交流もよかったです。
兄妹がぶつかりながら成長する、素敵な物語でした。
ガラス作家さんのガラス作品が欲しくなる一冊。
紋佳🐻









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