『たそがれ大食堂』


伝統あるマルヨシ百貨店に勤める美由起は、大食堂のマネージャーに就任した。

しかし、長年愛されていた大食堂は時代の変化とともに廃れ、存続の危機に直面していた。


その上、若社長が引き抜いてきた料理人の智子は、大食堂の味を片っ端から変えようとして・・・

古き良き大食堂の未来はいかに。
美味しい料理と懸命な奮闘が奇跡を起こす、お仕事グルメ小説!


『過剰に他者を攻撃する人は、たいてい自分も傷ついている。余所でつけられた傷を、ほんの少しつつかれて、「痛いじゃないか!」と逆上するのだ。怒りという感情は取り扱いが難しくて、ぶつける先をよく間違う。』

食堂で働くスタッフ同士の衝突の様子を見て、こう考えられる主人公の、なんて大人なこと。

立場上、というのもあるのだろうけれど。

もらい事故のような嫌な八つ当たりにあった時は、この話を思い出そうと思いました。


『「オーダー!お子様ランチ三つ!」

厨房の中の各リーダーが、返事をする代わりに右手の親指を立ててみせた。』

大勝負のオーダー。

厨房の中の、洋食、麺、和食、スイーツ担当の個性派揃いのリーダーたちが、いろんな経緯があってここまできて。

一斉に親指を立てている景色を想像して、鳥肌が立ちました。


最後の4行、最高だったなあ。


「扉」部分に使われている紙が、古き良き洋食屋さんの『床の模様』のようで、この本にぴったりでとにかくかわいいので、そのページだけでも見て欲しい!

そんな素敵な一冊でした。


紋佳🐻

読書