『大人になってやめたこと』


「何かをやめることは、私が私で生きるための
人生後半の大掃除だった気がします」

年を重ねると、世界はとらえようのないほど広くて、不確かなもの、とわかってきます。

だったら、ものさしを「自分」に置くしかない・・・。

引き出しの中身を、自分のものさしで再定義していく。

それが、私の50代の始まりでした。


そんな作業の中で、若い頃から「これは絶対に必要」と持ち続けていたあれこれが、実はいらないんじゃないか、と思うようになりました。

この本は、そうやって私が暮らしの中で、1つ、2つと「やめたこと」をまとめた一冊です。

『暮らしのおへそ』ディレクター、イチダさんの大人がもっとラクチンに生きられるコツ34!


本の趣旨としては、先日拝読した群ようこさんの『しない。』に通じるところもありますが、

日々の暮らしの中で一田さんが気づいたこと、出会った言葉が、静かに、やさしく綴られていて、こちらは読んでいて、とても穏やかなきもちになれるエッセイでした。


いつも、「楽しクマじめに!」をモットーにしている私ですが、昔から「マジメだね」と言われることがとても苦手でした。

その人は褒めるつもりで言ってくれたのかもしれないけど、「柔軟さがない」、「面白くない」と言われているようで、自分の欠点のように思わされて。

(だからこそ、「楽しく」を付けて、「楽しクマじめに」と言い出したのかも・・・。)

でも「欠点は武器にできる」と仰る一田さんの言葉に、そうですよね!と共感できるくらいには、ここ十数年で、自分を素直に受け止めることができるようになってきたかもしれません。


『私にとって、何かを「やめる」ということは、今まで歩いてきた道のすぐ横に、もう1本道がある、と気づくことでした。

太いメインストリートでなくても、細い路地裏の道を歩いても、きっと違った風景を眺めながらゴールにたどり着くことができる・・・。

そんなお楽しみを知ってから、少し生きることがラクになった気がします。』

自分が心地いい方法で暮らすことで、たとえそれがまわり道だったとしても、他の人とは違う景色に出会うことができるはず。


『「我が家はとっても狭いんです。でもね、居心地がいいんですよ。それは、嫌いなものが1つもないから。私は、どんな小さな場所でも、そこに自分の好きなものを集めさえすれば、幸せに暮らしていけると思うんです」

そんなお話を聞きながら、「満足度の風呂敷を広げすぎないっていいなあ」と思ったのでした。』


こんなにしっくりくるエッセイはひさしぶりでした。

一田さんのエッセイ、他のものもぜひ手に取りたいと思います。


紋佳🐻

読書