『あなたとなら食べてもいい 食のある7つの風景』


本屋大賞作家・町田そのこ書き下ろし含む7つの「食」を巡るアンソロジー。

穏やかな食卓を囲む二人に潜む秘密。
盗まれたエクレアが導く驚きの結末。
最後の砦のような居酒屋に集う人々の孤独。
減量に奮闘する女性が巡り会った恋。
美食の上で繰り広げられる女同士の舌戦。
幼なじみと再会して作る菓子の味。
駄菓子を食べ合う瑞々しい初恋とそれを眺める大人達の切ない祈り・・・。

7人の作家がこしらえた、
色とりどりの食べものがたりに舌鼓を打つ絶品アンソロジー。


よくあるグルメ小説のオムニバスかなと思って手にしたのですが、各作家さんの「本気」がうかがえる、とてもしっかりとした短編ばかりでした。


『悪意はまだまだ溜まったままだ。ある意味この悪意があったからこそ仕事がやめられなかったとも言える。
悔しい思いをするたびに芸能界への執着が強くなって、いつかきっと見返してやると、プライドばかりを高くしてきた。』

神田茜さんの『サクラ』では、同じ事務所の看板女優に潰されてきた40代女性タレントの憎悪が生々しく描かれていて、作中も、決して「おいしい料理」が出てくるわけではない。

だいすきな千早茜さんの『くろい豆』も、付き合ってみたらその男性は実は既婚者で、でもずるずると関係を続けてしまい、すると、また新たな浮気の疑惑が浮上・・・

さっきまであんなに美味しそうだった食べ物が、そんなに不味そうになるのねと、衝撃的な程の描写に惹き付けられます。


町田そのこさんのお話は、あの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』の番外編!

本編にも度々登場するあのお菓子が描かれていて、またお馴染みのあの人も登場するので、本編を読まれた方にはぜひおすすめしたいです。


「美味しいもの」とは、本人の精神状態と深く繋がっているのだなあと改めて感じさてくれる物語たちでした。


紋佳🐻

読書