『めざせ!ムショラン三ツ星』


「クサいメシ」と言われる刑務所の給食。

実は作っているのは受刑者自身。

そんなことも知らずに、日本一小さな男子刑務所で刑務所栄養士として働くことになった著者を待っていたのは、調理経験ほぼゼロの受刑者たち。

ふかしたジャガイモを冷ますために水をかけたり、冷凍コロッケが次々と爆発したり、料理初心者たちが真剣に取り組むあまりに起こる珍事件の数々。

現役刑務所栄養士である著者と受刑者たちは、数々の失敗にも負けず、刑務所給食を、少しでも健康的に、少しでもおいしく、少しでも簡単に、少しでもワクワクできるものにしようと試行錯誤を重ねてきた。

さあ、目ざすのは「ムショラン、三ツ星獲得」だ!


ドラマ『監獄のお姫さま』を視聴していたので、刑務所での生活の様子やルールが、知識として多少あったおかげで、臨場感を感じながら拝読できました。


『ゆで卵の殻がむきにくくなる原因は、白身に含まれる炭酸ガスが加熱により膨張するために薄皮にくっついてしまうためだ。
ゆでている間にこの炭酸ガスが抜けるようにしてやれば、殻はつるんとむけるのだ。
そのためには、からにスプーンの裏などで卵の丸っこい側にわざとヒビを入れてからゆでることによって、解決する。』

『コロッケに限らず、冷凍食品を揚げる場合に気をつけないといけないのは、一度に揚げる量だ。
揚げ油にたくさん放り込むと、油の温度が急激に下がってしまい、衣が揚がって固まらないうちに、中の水蒸気がふくらんで皮をつき破って爆発するのだ。』

料理に関する豆知識を知ることもでき、勉強になりました。


先日読んだ『裁判官の爆笑お言葉集』でも感じたことだけれど、犯罪者と言ってもさまざまな事情で裁かれた人たちが集まっているのが刑務所。

「食」を通じて、一喜一憂する受刑者の方々の様子は、とても素直で人間らしくて。

私は「何か罪を犯して刑務所などに入れられてしまったら、食べたいもの・呑みたいものを楽しむことができなくなる」という理由で、悪いことはしない!と常々思っているくらい、食べることが好きなので、「食だけが唯一の娯楽と言っても過言でない刑務所」のお話、とても興味深く読ませていただきました。

これが日常です!と、カジュアルに刑務所内の様子を綴ってくださった黒栁さんに感謝して。


紋佳🐻

読書