『ツミデミック』
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。
ある日、バイト中にはなしかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。
過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗はー「違う羽の鳥」
調理師の職を失った恭一は家に籠もりがちで、働く妻の態度も心なしか冷たい。
ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。
近隣の一軒家に住む老人からもらったという。隼からそれを奪い、たばこを買うのに使ってしまった恭一は、翌日得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れるがー「特別縁故者」
先の見えない禍にのまれた人生は、思いもよらない場所に辿り着く。
稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話。

コロナ禍によってもたらされたパンデミックの中、
ニュース番組で毎日発表される感染者数の数字に一喜一憂したり、
時短営業・お酒の提供等の規制によって廃業に追い込まれる飲食店が相次いだり、
緊急事態宣言中にも拘わらず密室で宴会をした芸能人が叩かれたり、
マスクが品薄になり手づくりマスクが流行ってその材料が売り切れたり、
東京から田舎に帰省し、白い目で見られたり。
持続化給付金、まん防、濃厚接触、自粛・・・
あの時、さんざん浴びたはずの言葉の数々―
のはずなのに。
読んでいて危機感を抱きました。
・・・もう忘れかけている。
小説という作品を通して、改めて当時の様子を客観視してみて、ようやく、実際に起こっていたこと、広まっていた価値観の異常さを認めることができました。
「罪」+「パンデミック」で、「ツミデミック」。
実力のある一穂ミチさんだからこそ、あの混乱の時代を、物語に落とし込めたのだろうなあと首肯した良書でした。
紋佳🐻









ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません