『廃墟建築士』


不思議な建築物にまつわる4つの物語。

廃墟は現代人の癒しの空間。

だが人が住んでいることが発覚し「偽装廃墟」が問題になり―

表題作ほか、ありそうでありえない建築物を舞台に繰り広げられる、不思議で切ない三崎ワールド。4編収録。


初めましての、三崎さん。

タイトルに惹かれて手にしたのですが、内容が想像と全く異なりました。

ミステリ?ホラー?そんな想像をしておりましたが、どちらかというと・・・SF、ディストピア系の不条理な世界が描かれた短編集でした。


「このプロジェクトにより、全国五ヶ所に同様の高層廃墟が建つことで、廃墟の延べ床面積は一気に倍増し、我が国は、恥じるところのない廃墟先進国となれるのです。
数十年後、この建物が真の廃墟として姿を現す時、国民は究極の癒しの空間を堪能することが出来るでしょう。」

事故・事件の件数が多いために、全ての建物の7階を撤去する(魔法のように消す理不尽さ)と発表した、役所に対するデモ活動や、

廃墟先進国を目指し、欠陥だらけの廃墟を建ててしまう国策など・・・

政治(政策)に対する皮肉、ブラックユーモアのようなものが込めた作品群でした。


『私は蔵です。ですが、蔵は私なのでしょうか。つまり、私と蔵は果たして同一存在なのか、という疑問です。
問うのは私で、問われるのも私の、堂々巡りの問いかけは、結論が出ないまま居座り続けます。』

政治情勢や社会問題を背景に据えた、哲学的で重厚感のある雰囲気・・・まるでロシア文学のよう。


読み終え、三崎亜記さんを検索して納得。

『風刺的な不条理小説を叙情的なファンタジーとして描く手法を得意とする。』

これ、刺さる人に、すごく刺さるやつ。


紋佳🐻

読書