『母』
母が嫌いだった。
わたしの脳内は母の固定観念で支配され、わたしはわたしが嫌いだった。
母から逃げるように飛び出した東京、タバコとパチンコに溺れた日々、愛想もお金も無いわたしを雇ってくれた水商売&雀荘、ひと時の夢を見せてくれたオトコ、“笑い"で幸せを運んでくれた先輩たち、そして、自分より大事な存在となった娘・・・。
自分のことが嫌いだったオンナ・青木さやかが、こじれた人生を一つ一つほどいていく。
生きることの意味を追い求めるヒューマンストーリー。

肺に見つかった癌の手術をするしないの、お医者さんとの押し問答が、まるで芝居の脚本のようで。
「あんたみたいな人、このまま病院こないでしょう?ダメだよ」
「きますよ、きますけど」
「なに?」
「2か月は動けない、舞台があって」
「舞台出てるの?」
「はい」
「なんていう舞台」
わたしはチラシを渡した。
「三谷幸喜じゃないか、これは行きたいなあ、わたしはね、呼吸器内科の三谷幸喜なんだよ」
「は?」
「呼吸器内科の世界では三谷幸喜だと言われてるんだよ」
「はあ」
「チケットとれる?」
「え?」
「妻と、2枚」
「あの、2か月後でいいんですかね、手術」
「あんた、女優さん?」
「まあ、女優、まあ、これに出ます」
「女優さんなら傷がカラダにつくのはねえ、手術やめとく?」
「え?」
「傷は残るから」
「手術しなくて治るんですか」
「治らない治らない、これは」
「手術しないって選択肢もあるんですか」
「あるよ、そりゃ。自由だから。私なら絶対するけど」
「どーゆーこと!?」
「チケットとれる?」
言葉の選び方、テンポ感が、お笑いをやってる方らしく、楽しみました。
青木さんらしい笑いが生まれるページがある一方で、心情的に辛い内容も多々。
母親への嫌悪感、トラウマに縛られ、支配された人生。
母が憎くて、母になった自分が嫌いで・・・そんな悲痛な叫びが伝わってくる、濃厚な一冊でした。
こんなにも素直なエッセイは他にない。
紋佳🐻









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