『ドヴォルザークに染まるころ』


小学生のとき、担任の先生と町の外からやって来た男が駆け落ちしたのを忘れられない主婦。

東京でバツイチ子持ちの恋人との関係に寂しさを覚える看護師。

認知症の義母に夫とのセックスレスの悩みを打ち明ける管理栄養士。

父と離婚した母が迎えに来て、まもなく転校することになる小六の女の子。

発達障害のある娘を一人で育てるシングルマザー。

小さな町で、それぞれの人生を自分らしく懸命に生きる女性たちを描いた感動作。


結婚していても、独身でも。

子どもがいても、いなくても。

それぞれにみんな、悩み生きている・・・それが人生。

これだけの登場人物がいて、ちゃんと幸せなひとがまったくいないのも珍しい。

でもそれがリアル。


30代、40代・・・と、長く生きれば生きるほど、うまく自分と向き合えているのかと思いきや、

過去の傷が疼いたり、将来に対する諦念に、惨めな想いを抱いたり。

各短編のラストで、17時を告げるドヴォルザークが流れ出す。

悩み生き抜いた1日がまた終わりを迎える気配に、もの悲しさと温かさを感じるのでした。


町田さんの真骨頂。

完璧じゃない、人間くさい登場人物たちが、泥臭く生きていく作品でした。


それにしてもここまで、

「逃げてはいけない。向き合って!」

というメッセージ性を町田さんの作品から感じたのは、初めてかもしれません。

逃げてもいいよじゃなくて、逃げるな。

目を逸らすな。蓋をするな。

全ては、自分を愛するために。


紋佳🐻

読書